今回は、白内障手術で使用する、多焦点眼内レンズについてです。
多焦点眼内レンズとは、どのようなものなのか、それが患者さんの日常生活にどう恩恵を与えるか、そして、その白内障手術手順について詳しく解説します。多焦点眼内レンズに関する知識を深めることで、みなさまが自らの治療についてより良い選択をする助けとなれば幸いです。
多焦点眼内レンズとは?
白内障手術では、目の中の濁った水晶体を取り除き、残った水晶体嚢に人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入します。この挿入する眼内レンズの種類で、術後の見え方が大きく変わります。その中の一つである多焦点眼内レンズは、その名の通り、複数の焦点を持つ特別な人工レンズです。このレンズの大きな特徴は、遠くの物体だけでなく、中間距離や近くの物もクリアに見えるように設計されていることです。つまり、手術後も老眼鏡や読書用の眼鏡をかける必要が少なくなる可能性があります。
なぜ多焦点眼内レンズを選ぶのか?
例えば、趣味で読書を楽しみ、日常的にパソコン作業をし、運転も頻繁に行う65歳の田中さんがいるとします。田中さんは白内障の診断を受けましたが、普段の活動に支障をきたさないよう、できるだけ自然な視力を取り戻したいと考えています。このような場合、単焦点レンズで手術をすると、術後、遠くはよく見え、運転は眼鏡なしで可能ですが、読書、パソコン作業は、老眼鏡が必要になります。しかし、多焦点眼内レンズを選択するとどうでしょうか。もちろん、遠くはよく見え、手元も老眼鏡なしで本を楽しんだり、コンピューターを使ったりと眼鏡なしで日常生活がある程度可能になるのです。田中さんの生活スタイルに合った多焦点眼内レンズの選択と言えるでしょう。
白内障手術手順は何かかわるのか?
多焦点眼内レンズの挿入手順は、一般的な白内障手術と基本的に同じです。まず、眼球に小さな切開を行い、濁った水晶体を超音波を使用しながら吸い取ります。その後、折りたたまれた多焦点眼内レンズを切開部から挿入し、レンズが目の中で展開して適切な位置に固定します。この手術は通常、局所麻酔下で行われ、手術時間は約10分程度です。術後は、眼帯にて帰宅していただき、翌日の術後診察まで眼帯ですごしていただきます。
注意点と患者さんの声
手術に際して重要なのは、多焦点眼内レンズがすべての人に適応とは限らないという点です。眼底に緑内障や糖尿病網膜症などの病気がある人は適応とならない可能性もあります。夜間運転を頻繁にする方や、極端に高い期待を持つ方は、レンズの特性や可能性に関する十分な説明を受け納得して手術を受けることが大切です。また、患者さんからは手術後の生活の質の向上に対する多くの満足な声が寄せられています。「手術後、老眼鏡なしで新聞を読めるようになった」「以前はできなかった趣味の手芸が楽しめるようになった」といった声は、多焦点眼内レンズの大きなメリットを物語っています。
まとめ
白内障手術における多焦点眼内レンズの選択は、多くの患者さんにとって、日常生活の質を劇的に向上させる可能性を秘めています。しかし、それが最適な選択肢であるかどうかは、患者さんのライフスタイルや目の状態、期待値により大きく異なります。したがって、手術を検討されている方は、専門の医師と十分に相談した上で、自身に最適な選択をすることが重要です。多焦点眼内レンズは、多くの人に明るくクリアな世界を取り戻す手助けとなり得ます。
サークル帝塚山眼科では、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を行っております。ご質問がある方は、ご気軽に受診してください。